鬼門突破へ! 森保ジャパン「チュニジア撃破」のキーマンは誰だ!?

取材・文/オグマナオト 写真/時事通信社 共同通信社

サイドへの正確な球出しが武器の冨安。全試合出場は難しくとも、課題を見つけ仲間に助言できる存在は頼もしいサイドへの正確な球出しが武器の冨安。全試合出場は難しくとも、課題を見つけ仲間に助言できる存在は頼もしい
ついに開幕したW杯北中米大会。森保ジャパンの次なる相手は、北アフリカの雄、チュニジアだ。鬼門の第2戦突破へ――。攻略法はあるのか!?

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【海外W杯で未勝利。日本の鬼門「第2戦」】

ついに幕を開けたサッカーW杯北中米大会。森保ジャパンの次なる戦いはグループリーグ第2戦、日本時間6月21日のチュニジア戦だ。

大会前のFIFAランキングでは日本の18位に対し、チュニジアは45位(6月10日時点)。さまざまなオッズなどを見ても「日本有利」と言えるのだが、実は不安要素もある。日本代表にとって第2戦は「鬼門」だからだ。

過去のW杯を振り返ると、グループリーグ第1戦も第3戦も過去3勝ずつしているが、第2戦は1勝3分け3敗。しかも、その1勝は自国開催だった2002年日韓大会で、海外開催の大会では未勝利なのだ。格下だと油断せず、気を引き締める必要がある。

「真面目な国民性だからか、初戦に向かって目線をそろえられるのが日本人の良さ。ただ、初戦にフォーカスしすぎるあまり、過去大会では第2戦がなおざりになっていた部分があるのかもしれません」

前回大会のコスタリカ戦では批判も浴びた伊藤。強豪バイエルンで積んだ経験を武器にリベンジを期す前回大会のコスタリカ戦では批判も浴びた伊藤。強豪バイエルンで積んだ経験を武器にリベンジを期す
こう語るのは、森保ジャパンの取材を長く続けるスポーツライターのミムラユウスケ氏。ただ、本気でW杯優勝を目指すのならば、この苦手意識も克服する必要がある。

「本大会前の最後の壮行試合となったアイスランド戦は、本来『対オランダ』を想定したマッチメークだったはず。ただ、試合後に主力の堂安 律に話を聞くと、『チュニジアも想定して戦っていた』と語ったんです。ここに頼もしさを感じました。

日本よりも海外のほうがマクロ的視点で物事の全体像をとらえるのが得意。今の代表はほとんどが海外組ですから、大会全体を見据えた準備ができるようになっていると期待したいです」

日本代表は第1戦と第3戦をアメリカ・ダラスで戦い、第2戦だけが大会直前の合宿地でもあったメキシコ・モンテレイに変わる。会場変更による影響はないのか?

「日本代表OBに取材すると、海外の大会ではその土地の空気を一度吸っておくことが大事、という話をよく耳にします。その意味で、事前にモンテレイで調整できたことは大きい。

逆にチュニジアは第1戦も第2戦もベースキャンプ地もモンテレイ。ずっと同じ場所にいることで気の緩みが生じる可能性もあります」

足が速く、球出しも巧みな22歳DF・鈴木淳之介。初出場のW杯で森保ジャパンの最終ラインに新風を吹き込めるか足が速く、球出しも巧みな22歳DF・鈴木淳之介。初出場のW杯で森保ジャパンの最終ラインに新風を吹き込めるか
気候面でも、長くモンテレイにいることの影響は大きい。

「モンテレイはダラス以上に暑く、湿度も高い。一方のダラスは冷房の効いた屋内スタジアムで戦えます。ずっとモンテレイにいるチュニジアは移動の負担がない利点はあるものの、高温多湿の日々で疲労が蓄積されることも考えられる。この点は日本への追い風になってほしいところです」

【前回コスタリカ戦の教訓を生かせるか】

ここからは「対チュニジア」の展望を考察したい。大会直前の強化試合ではベルギー相手に0-5と大敗を喫したチュニジア。だが、アフリカ予選では9勝1分けと無敗。しかも、「無失点突破」の安定した守備が本来は持ち味だ。

「チュニジアは4バックと5バックを併用し、昨年の親善試合ではブラジルにも1-1の引き分けに持ち込んでいます。ただ、選手個々の能力、チームの洗練度で言えば、確実に日本が上。日本がボールを持つ時間が長くなる展開は間違いないと思います」

こう語るのは戦術分析官としてYouTubeで人気を博し、自身もクラブチーム監督を務めるレオ・ザ・フットボール(以下、レオザ)氏だ。

「4バックか5バックかはチュニジアの初戦の結果にもよりますが、日本がくみしやすいのは4バック。逆に5バックで引いてきた場合は、日本が使いたいサイドのスペースをしっかりケアされるため、なかなかチャンスがつくりにくい。前回大会の第2戦コスタリカ戦も5バックを攻めあぐね、0-1で敗れています」

得意のクロスでアイスランド戦でも決勝点をアシストした菅原。守りを固める相手を崩す切り札になりうる得意のクロスでアイスランド戦でも決勝点をアシストした菅原。守りを固める相手を崩す切り札になりうる
では、同じ轍(てつ)を踏まないため、どう攻めればいいのか。

「相手は中央から固めるので、サイドの低い位置が最も自由になります。そこで重要になるのが、3バックの両脇の選手からサイドへの球出しです。コスタリカ戦での日本は急遽(きゅうきょ)システムを変えた影響もあり、この位置からの配球がうまくいきませんでした」

ただ、4年前と違うのは、サイドからの球出しが得意な選手が何人もいる点だ。

「冨安健洋(たけひろ)が出られれば間違いないですし、鈴木淳之介も球出しはうまい。そして、コスタリカ戦でうまく機能できず批判を集めた伊藤洋輝も、強豪バイエルンで経験を積んだことで配球の意識が高まっています。チームとしても個人としても、この4年間の進化を見せてほしい」

ミムラ氏は別の視点から前回大会との違いを示す。

「コスタリカ戦は試合間隔が中3日しかなく、先発を初戦から5人も変更。代わった選手たちがアピールしようと焦ってしまった部分もありました。しかし、今大会は初戦から第2戦まで中5日あり、そこまで大幅にメンバー変更をしないはず。

また、先発の選手、後半から出る選手とでそれぞれ役割が明確化され、お互いが評価される集団になっています。焦りのない中でプレーできれば、おのずと結果にもつながりやすい。

森保一監督と堂安ら中心選手の意思統一もできている。チームとしてのメンタル面での成長を示す試合になると思います」

アイスランド戦で決勝ヘッドを沈めた小川。中村コーチ直伝のクロス対応で、鬼門突破に導くゴールを決められるかアイスランド戦で決勝ヘッドを沈めた小川。中村コーチ直伝のクロス対応で、鬼門突破に導くゴールを決められるか

役割の明確化という点で期待したいのは、今大会前のアイスランド戦での決勝点パターン。後半に投入された菅原由勢(ゆきなり)のクロスから、同じく途中出場の小川航基(こうき)が頭で合わせたシーンだ。守りを固めてくる相手から1点をもぎ取る上で、切り札になるだろう。

「小川は『クロス対応の秘訣(ひけつ)は相手DFとの駆け引きよりも、味方のクロッサーを理解すること』と語っていますが、これはジュビロ磐田時代、当時チームメイトだった中村俊輔さんから教わったこと。

その信頼を寄せる人物が代表コーチになり、大会中もアドバイスがもらえる。チュニジア戦でも菅原とのセット投入はあるかもしれません」

レオザ氏は、セットプレーからの「二の矢、三の矢」にも注目する。

「いいクロスから攻撃ができれば、そこで点が決まらずとも、コーナーキックのチャンスにつながる。DF陣の攻撃参加にも期待したいです」

【鬼門突破へ受け継がれる教訓】

勝利を目指す上では、相手に得点を許さないことも重要になる。チュニジアはどう攻めてくるのか。

「攻めあぐねる日本からボールを奪い、カウンターからフリーキックやコーナーキックを狙ってくるはず。プレミアリーグ経験の長いハンニバル・メイブリは精度の高いキックを蹴ってくるので要注意です」

ただ、日本が本来の力を出せれば、問題なく対処できるはずだという。

「鈴木淳之介や伊藤ら、足の速いDFが何人もいます。彼らが落ち着いて対応できれば、個の能力では負けていないので、カウンターにも対処できます」(レオザ氏)

「ボールを失った際、守備でプレスを何度もできるのが日本の強み。

前回大会での守備時のプレス回数では、全選手の中で1位が前田大然、2位が堂安、3、4位はモロッコの選手で、5位が鎌田大地でした。トップ5の中に日本人が3人もランクインしており、なおかつ全員が今大会のメンバー。前回大会に引き続き、カウンタープレスに期待したいです」(ミムラ氏)

ミムラ氏は「DF陣のリスクマネジメントへの意識も高まっている」として、アイスランド戦後の冨安のコメントを紹介する。

「冨安は『自分たちがボールを持っているとき、守備的ポジションの選手がカウンターに備えてどう配置すべきかで実は課題があった。いい反省材料ができた』と明かしています。冨安はコンディション的に全試合に出場することは難しくても、こうした課題を見つけてチームメイトと共有し、アドバイスできる立場にいるのは頼もしいです」

加えて、過去を知るベテラン、OBが大勢いることも今大会の日本の強みだ。

「堂安はサポートプレーヤーとして招集された吉田麻也から、『一分一秒、すべてのシチュエーションに備えてプレーしろ』と指摘され、『W杯のためには一秒も無駄にできない』と意識が高まったと話しています。

ほかにも長友佑都、長谷部誠コーチや中村コーチと、過去のW杯で苦い経験をしてきた人たちが現代表には何人もいます。第2戦で苦杯を舐めてきた教訓もきっと共有しているでしょう」

新たな日本サッカーの歴史をつくろうと意気込む森保ジャパン。ならば、まずは「第2戦が鬼門」という過去の呪縛を払拭してみせてほしい。

ちなみに、チュニジア戦には「第2戦が鬼門」ということ以外にも不吉なジンクスがつきまとう。

日本代表はこの試合にユニフォームもパンツもソックスもすべて青で臨むが、W杯において"全身青"で戦った試合は1勝4分け6敗、勝率9.1%と散々な成績なのだ!

ドイツ大会ブラジル戦、ブラジル大会コロンビア戦は共に1-4と大敗しているだけに、チュニジア戦が心配になる方もいるかもしれない......。

でも、大丈夫! そんな不安を払拭する吉兆ジンクスも存在するのだ。左ページをぜひチェックしてほしい!

  • オグマナオト

    オグマナオト

    おぐま・なおと

    1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。

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