オグマナオト
おぐま・なおと
オグマナオトの記事一覧
1977年生まれ。福島県出身。雑誌『週刊プレイボーイ』『野球太郎』『昭和40年男』などにスポーツネタ、野球コラム、人物インタビューを寄稿。テレビ・ラジオのスポーツ番組で構成作家を務める。2022年5月『日本野球はいつも水島新司マンガが予言していた!』(ごま書房新社)を発売。
空調の効いた屋内型会場、ダラス・スタジアム。オランダ戦に続く決戦の地で勢いに乗りたい
いよいよグループリーグ第3戦。再びダラスの地に戻り、強力FWを擁するスウェーデンと戦う森保ジャパン。難敵撃破に向けた〝3人のキーマン〟とは!?
サッカー北中米W杯はいよいよグループリーグ最終戦へ。日本は6月26日(日本時間)、スウェーデンと激突する。FIFAランキングは18位の日本より低い38位だが、欧州主要リーグで活躍する選手を擁し、決して侮れない。過去の対戦成績も1勝2分け2敗(うちPK負けが1試合)とほぼ互角だ。
「欧州プレーオフを勝ち上がってきたとき、『厄介な相手が来たな』と思いました。ただ、オランダ相手に攻守で落ち着いたプレーを見せた今の日本であれば大丈夫。警戒すべきところは警戒しつつ、恐れすぎなくていい相手です」
こう語るのは戦術分析官としてYouTubeで人気を博し、自身もクラブチーム監督を務めるレオ・ザ・フットボール(以下、レオザ)氏だ。
日本から直行便が飛ぶダラス。オランダ戦に続いて多くの日本人サポーターが駆けつけそうだ
まずはそのスウェーデンの戦力を分析したい。チームをまとめるグレアム・ポッター監督は、三笘薫がブライトンでプレミアリーグデビューした際の恩師でもある。
「オーソドックスなシステムは3-5-2。3バックとボランチでボールを回しながらサイドに張るウイングバックと前線でこじ開けるスタイルですが、相手が格上の場合は5バックでしっかり引いて守り、強力FW陣を使ってカウンターを狙います。日本を格上と見て臨んでくるでしょう」
その強力FW陣の代表格はアーセナルのヴィクトル・ギェケレシュ。欧州プレーオフ準決勝でハットトリック、決勝でもゴールを決め、チームをW杯に導いた英雄だ。
「パワーとドリブルの推進力で相手ゴール前までひとりで攻め込める選手です。さらに、相手を背負ったカタチからでもシュートまで持っていける。チームのために従順に頑張る選手、という点でも厄介です」
パワーと推進力を誇る"剛"のFW、ギェケレシュ。欧州プレーオフで大暴れし、W杯へ導いた
リバプール所属のアレクサンダー・イサクも注目選手だ。
「パワーで運ぶギェケレシュに対し、技で運ぶのがイサク。ギェケレシュほど連続した運動量はないものの、相手の逆を突くのがうまい選手です。たとえるなら、マンガ『SLAM DUNK』のキャプテン赤木剛憲と流川楓(るかわ・かえで)のような、〝剛〟と〝柔〟の関係性と言えます」
技で相手の逆を突く"柔"の点取り屋、イサク。大ケガから復帰し、W杯に間に合わせた
さらに厄介なのは身長の高さで、ギェケレシュは189㎝、イサクは192㎝。チーム平均身長はオランダよりも1㎝高い約186㎝で、出場48ヵ国のうち3番目の高身長軍団だ。
当然、セットプレーでの対処法が鍵を握る。この点で、日本の頼もしさを教えてくれるのは、森保ジャパンを長く追い続け、今大会も現地で取材するスポーツライターのミムラユウスケ氏だ。
「オランダ戦では195㎝のフィルジル・ファン・ダイクのセットプレー対策が課題でしたが、DFの渡辺剛がキーマン対策を進言し、ファン・ダイク対策の特別システムが誕生。これは3月のイングランド戦で194㎝のハリー・マグワイア相手に苦戦したことを踏まえ、選手の感覚を重視してチーム内で議論した結果です」
実際、オランダ戦ではファン・ダイクに決められたものの、セットプレーからの攻撃は見事に防いでいた。
「スウェーデン戦に渡辺が出る、出ないにかかわらず、課題を共有して対応策を練る姿勢は継続されるでしょうし、オランダ戦での経験をさらに応用してギェケレシュやイサク対策を徹底するはずです」
では、スウェーデン戦でキーマンとなるのは誰か。ミムラ氏は3人の選手を挙げる。
「第3戦は先発メンバーを大きく変える可能性があります。そこで期待したいのは、守備陣では新キャプテンの板倉滉、中盤では田中碧、前線では後藤啓介です」
板倉といえば、大会3日前に遠藤航からキャプテンを引き継いだことに話題が集まるが、本人が何より望むのはプレーで仲間を引っ張ることだ。
「キャプテンになった瞬間から誰よりも長く、嫌な顔をせず取材対応に臨む一方で、『スタメンで出たい』というハングリーな姿勢もしっかり見せてくれています」
離脱した遠藤航のユニフォームを掲げる板倉。大会3日前にチームキャプテンを引き継いだ
実は所属クラブのアヤックスでも、逆境から評価を覆して活躍した前例がある。
「板倉は昨年秋、背中や腰の痛みも影響してか、メディアから批判を集めがちでした。そこから奮起し、昨年12月にはオランダリーグの月間ベストイレブンに選ばれるほどのパフォーマンスを発揮。
キャプテンとしての献身的な姿勢は誰もが認めているので、今度はピッチ上で『やっぱり板倉がいると違うな』という姿を見せられれば、チームはより一体感を増すはずです」
田中も所属クラブのリーズで悔しさを味わい、そこから奮起してこの舞台にたどり着いた。
「田中は昨季、約4ヵ月も出番のない時期がありましたが、久しぶりの先発となった今年4月のマンチェスター・ユナイテッド戦で勝利に貢献しました。その後はシーズン最後までスタメンの座を死守。
今大会、プレミアリーガーである自分がスタメンではないことへの悔しさを感じているはずですし、出番をもらったら発奮するでしょう」
プロデビュー戦から大事な試合でゴールを決めてきた田中。"持っている男"に期待がかかる
過去、大事な試合でゴールを決めてきた頼もしさも、田中の〝らしさ〟と言える。
「2018年のプロデビュー戦でのゴールから始まり、森保監督の解任危機がささやかれていた21年のオーストラリア戦で代表初先発初ゴール。前回カタール大会スペイン戦で〝三笘の1㎜〟から決めたのも田中です。
持っている男、という点でも期待したいです」
今月21歳になったばかりの後藤は、〝弟キャラ〟としてチームのさらなるカンフル剤になりうる存在だ。
「後藤はオランダ戦のハーフタイムには巨大クーラーボックスを抱え、スタメン選手たちに飲み物を配っていました。また、試合後にスタッフの荷物運びを手伝うことも。そんな性格も浸透し、代表にもすっかりなじんできました。
こうなると試合でもいいパスが来やすい。上田綺世から直接いろいろ教わっている姿を見るので、その成果を発揮してほしいです」
今月21歳になったばかりの後藤。代表キャップ4試合だが、背番号9を託された期待の新星だ
若いながらも、代表への自覚が強い点も後藤の魅力だ。
「後藤は5歳だった10年南アフリカ大会から覚えているそうで、『代表歴は浅くても代表への思いは先輩たちにも負けてない』と語る頼もしさもあります。過去に中山雅史さんや高原直泰さんらジュビロ磐田の先輩たちが背負った『背番号9』を託されており、チームから大きな期待を寄せられています」
レオザ氏も、1点をどうもぎ取るかに注目する。
「オランダ戦で素晴らしいゴールを決めた中村敬斗は今大会のラッキーボーイになれる存在。シュート以外でも、中村がサイドから仕掛けることで日本のチャンスが広がっていきます。小川航基や塩貝健人ら、途中出場から起爆剤になれる存在がいるのも日本の楽しみな点です」
試合会場は、オランダ戦と同じテキサス州ダラス。スウェーデンはダラスでの試合は初めてではあるが、ベースキャンプ地をダラスに構えているため、移動の負担面では日本が不利とされている。
だが、ミムラ氏は別の視点から日本の優位性を指摘する。
「屋内型会場のダラス・スタジアムは空調が効いていて、試合をする分には問題ない。気にすべきは試合以外の環境で、高温多湿なダラスでずっと練習していると発汗量も増えて体力を奪われやすいなど、蓄積ダメージは非常に大きいはず。
だからこそ、日本は2試合戦うダラスではなく、より湿度の低いナッシュビルをベースキャンプ地に選びました。その選択が吉と出るのではないでしょうか」
また、スウェーデンの選手選考も、長丁場では日本への追い風になりうるという。
「ポッター監督は、能力以上にメンタリティを重視して選手を選んだと言っています。そのため、まとまりはあるものの、サブ組のレベルが落ちるので、試合を重ねるほどに主力選手の疲労度はより増していくことが考えられます。
第3戦でスウェーデンと戦えるのは、日本にとっていい組み合わせと言えます」
ほかにも、ダラスで戦う日本ならではの利点があった。
「日本からダラスへは直行便が出ているので、弾丸観戦もしやすい。オランダ戦では日本のサポーターが人数でも声量でも勝っていた印象です。第3戦でもサポーターの声は日本の後押しになります」
レオザ氏は、押せ押せムードになったとしても、日本の〝らしさ〟を見失わずに戦ってほしい、と語る。
「ある程度ボールを持てる試合展開になると予想しますが、ボールを持てるとつないで崩したくなるのが選手心理。そこで我慢して、オランダ戦のようにしっかりサイドからチャンスをつくる姿勢を徹底できるか。色気を出さず、これまでの戦い方からブレないことが重要だと思います」
日本代表の未来を占う重要な一戦。ここで勢いに乗り、決勝トーナメントを勝ち上がって〝最高の景色〟をぜひとも見せてほしい!