アイスでもダメなのか? 大手6社に「カルテル疑惑」

写真/共同通信社

公取委の立ち入り検査を受けたのは(左上から時計回りに)明治、森永乳業、ロッテ、赤城乳業、森永製菓、江崎グリコ公取委の立ち入り検査を受けたのは(左上から時計回りに)明治、森永乳業、ロッテ、赤城乳業、森永製菓、江崎グリコ
あらゆるメディアから日々、洪水のように流れてくる経済関連ニュース。その背景にはどんな狙い、どんな事情があるのか? 『週刊プレイボーイ』で連載中の「経済ニュースのバックヤード」では、調達・購買コンサルタントの坂口孝則氏が解説。得意のデータ収集・分析をもとに経済の今を解き明かす。今回は「カルテル」について。

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「捕まりたくなかったら同業者と絶対に話すなよ」

私が自動車メーカーで勤務していたとき、北米出張で先輩からクギを刺された。理由は反トラスト法で、米国では刑事罰が科されるという。日本でいう独占禁止法だ。

私は調達部門。だが「え、独禁法って販売部門が談合で捕まるやつでしょ」という認識は甘すぎた。市場を歪(ゆが)める可能性のある接触はなんでもご法度だ。

現在、私たちの会社ではイベントで同業者を並べないようにしている。価格情報とか取引先情報の交換などもってのほかだ。

先日、江崎グリコ・明治・ロッテ等アイス6社を独禁法違反の疑いで公正取引委員会が検査した。当稿執筆時点ではまだ「疑い」にすぎないが、カルテルを結んで値上げ幅や時期を相談していた可能性があるとされる。

公共入札の談合ならば聞き馴染(なじ)みがあるだろう。業者間で見積金額や受注順を秘密裏に相談する行為だ。これは税金が特定業者に奪われる構図で「悪」がわかりやすい。

ただ今回は、「アイスでもダメなのか」と思った読者も少なくないのではないか。高かったら買わなければいいだけじゃね、と。しかしこれも市場を歪める行為とみなされる。

私たちの国は自由で公平・公正な経済活動による競争が土台だ。それが消費者の利益と企業の利益の合計(=社会的余剰)を最大化する。業者同士がいちゃいちゃすると、企業の利益は最大化するかもしれないが、消費者がソンをしてしまう。自由競争ならもっと安価に、もっと質のよいものが手に入ったかもしれないのに、その可能性は潰(つい)える。

逆も然(しか)りだ。

調達先をイジメて本来100円のものを50円で買ったとする。競合他社は100円でしか買えない。商習慣として問題のあるアコギな企業が生き残り、健全で倫理的な企業が淘汰(とうた)される。だから独禁法はこれを「優越的地位の濫用」として禁じている。調達先に丁寧な対応を、がこのところの潮流だ。

ところでカルテルはどんなときに生じるだろうか。前提になるのは新規参入が困難な業界だ。カルテルを組んだって、続々と新プレイヤーが登場したら意味がない。

逆に企業が少ないと、そのうち顔見知りになるしね。次に、商品の同質性が高い場合だ。差別化が難しかったら、どうしても価格勝負になりがち。だから各社と結託したくなっちゃう。

また、価格の弾力性(価格の変動が需要に及ぼす影響)が低い商品もそう。200円のアイスを400円にしたらさすがに消費者は買わなくなるだろうが、多少上がっても好きな人は買う。そういう商品。嗜好品(しこうひん)のなかでも消費習慣があるものは、カルテルの恩恵にあずかる。

なお海運のように、競争が激しくなりすぎて各社が倒産してしまうと、むしろ消費者の損害が大きくなるケースもある。だって日本に何も入ってこなくなっちゃうもんね。それらは一部、例外的に独禁法適用を免れている。

ただ、こうした例外を除けば、日ごろからみなさんも同業者とのコンタクトには気をつけたほうがいい。アイスよりも溶かすべきは同業者との紐帯(ちゅうたい)なのだろう。

それにしても、某社の両手を挙げたゴールインポーズ。もしカルテルが事実なら、その手が示すのはゴールではなく公取委への降参かもしれない。

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  • 坂口孝則

    坂口孝則

    Takanori SAKAGUCHI

    調達・購買コンサルタント。電機メーカー、自動車メーカー勤務を経て、製造業を中心としたコンサルティングを行なう。あらゆる分野で顕在化する「買い負け」という新たな経済問題を現場目線で描いた最新刊『買い負ける日本』(幻冬舎新書)が発売中!

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