サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第187回。
現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。
前回まで5回にわたり宮澤ミシェルが注目する東京五輪世代のサッカー選手を紹介する特別編をお届けしたが、最後となる今回は番外編。宮澤ミシェルが可能性を感じるという2名のCB、FC東京の渡辺剛と鹿島アントラーズの町田浩樹を紹介する
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植田直通がベルギーリーグのセルクル・ブルージュからフランス・リーグアンのニームに移籍したね。DFがシーズン途中に移籍するのは難しいものがあるけれど、ニームは最下位に苦しんでいるから、必ず出番は訪れると思うよ。そこでしっかり植田の持ち味を発揮して、飛躍のキッカケにしてもらいたいね。
植田のことは彼がユース年代の頃に初めて見たんだけど、その時は将来の日本代表CBは安泰だと思うほど期待したんだ。だけど、日本代表に選ばれるようになったものの、現状ではレギュラーポジションを奪うには足りないよね。
下の世代を見れば、冨安健洋が大ブレイクして世界的に注目される選手になった。その冨安に刺激を受けて、植田を一気に追い抜こうという選手も出てきている。植田は日本代表生き残りの正念場を迎えようとしているから、どうにか頑張ってもらいたいね。
その下の世代である東京五輪世代で、冨安健洋と将来の日本代表でCBコンビを組める才能を持っていると感じるのが、FC東京の渡辺剛と鹿島アントラーズの町田浩樹。
渡辺は186cm、町田は190cmと、日本が世界の強豪と戦うためにCBには不可欠な高さを備えているんだ。まあ、大きいだけなら他にもいるけど、彼らはそれだけの選手ではないんだ。
渡辺は大卒1年目だった2019年からJリーグで存在感を発揮して、EAFF E-1サッカー選手権2019で日本代表にもデビュー。昨季も2年目のジンクスに陥ることなく、しっかり成長を遂げたよ。
1対1も強いし、空中戦も競り勝つ。機敏なCBではないけれど、重戦車のような強さがあるし、なにより安定感があるよ。それにFC東京で副キャプテンをつとめているから、東京五輪世代ではリーダーシップも期待したくなるね。
町田はCBとして貴重な左利きなのと、規格外の190cmのサイズが魅力だよな。デカイからスピードがあるようには見えないけど、長い足のコンパスでしっかり対応するし、1対1も落ち着いて対処するよね。フィード能力も下手ではないよ。もっと長短のパスに磨きをかけていけば、いつ日本代表入りしても不思議はないよ。
渡辺と町田はともにポジショニングもいいんだよ。しっかりパスコースや相手の動き出しを読んで、体を張ってピンチの芽を潰すんだ。まあ、彼らの所属するクラブはJリーグでも安定して上位にいるチームだから、そういうところが出来なければレギュラーにはなれないんだけどね。
彼らが今年目指すのは東京五輪代表になるわけだけど、このふたりのどちらかが、CB冨安のパートナーになるんだろうな。ただ、ふたりが同じように大きく成長したら、渡辺と町田でCBコンビを組むという選択肢も生まれるよな。
そうなったら日本サッカーはおもしろいよ。冨安を右サイドバックやボランチで使えるなんてすごいことだよな。そうなるように渡辺と町田には高みを目指して成長を重ねてほしいね。
そのためには渡辺も町田も、まだケツの位置が高いんだよな。冨安はあれだけの長身なのに、ケツの位置が低いんだよ。重心が低いから、屈強な外国人FWと体のぶつけ合いでも渡り合えるんだろうし、フェイントにもしっかり対応できるんだ。
渡辺と町田には、走り方も含めて、体の使い方を意識しながら、もうひと回りもふた回りもスケールアップしていってくれるのを期待しているよ。
この二人が日本代表入りの見えるところまで成長してくれれば、植田のお尻に火がつくだろうね。そうしたら、植田が覚醒するかもしれないでしょ。それに吉田麻也だってウカウカしてられないとムチ打つと思うんだよな。ベテランというものは若手に突き上げられるほど、存在感を増していくものだからね。
それだけに渡辺と町田のふたりが今シーズンのJリーグでどういう存在感を発揮しながら、成長していくかは注目しているよ。同世代にいる冨安と比べられることからは逃げられないだけに、冨安の存在を受け止めて、そこを乗り越えていく意気込みでやってほしいね。
サッカーを見る時に攻撃的な選手に目が向く人が多いと思うけど、日本サッカーはCBが充実しつつあることを念頭に置いて、彼らのプレーにも目を向けてくださいね!!!