『グラビアの読みかたーWPBカメラマンインタビューズー』鈴木ゴータ編・後編「最後にシャッターを切る瞬間には、特別な意識が働きます」

取材・文/とり 撮影/小谷田


あまり表に出ることのないカメラマンに焦点を当て、そのルーツ、印象的な仕事、熱き想いを徹底追究していくインタビュー連載が、週プレ創刊60周年を記念して復活。第七弾となる今回は、天羽希純写真集『きすみすき』や、8月24日(月)発売『週刊プレイボーイ36号』で十味&岸みゆ&姫野ひなの(#Mooove!)のコラボグラビアを撮り下ろした鈴木ゴータさんが登場です。

後編では、西田幸樹さんのアシスタント時代のエピソードから、カメラマンとしての転機、撮影のこだわりについてお聞きしました。

*  *  *

――本格的に写真の道で生きていくと決めてから、4年半ほどブライダルカメラマンとして活動されたのち、西田幸樹さんのアシスタントに付かれたとうかがいました。同じカメラマンでも全然畑が違いますし、特に西田さんは、グラビア業界で長く最前線で活動されているお方。かなり刺激的だったんじゃないですか?

鈴木 最初、西田さんからは「フィルムとデジタル、両方を勉強してほしい」と言われて。先輩アシスタントからの引き継ぎ期間が3ヶ月あったので、その間で必死にプロの機材の扱い方を覚えました。と言っても、全然覚え切れなかったのですが......。また、普通はスタジオマンを経てアシスタントに付くことが多いですが、僕は経験がなかったので、スタジオワークの基本も覚えないといけない。とにかく覚えることが多すぎて、最初の1年間は記憶がないです(笑)。

――た、大変そうです......。

鈴木 僕の父は絵を描くデザイナーをしていたと話しましたが、僕が幼い頃は、アトリエに籠りきりだったんです。それで就職後に亡くしているので、あまり「男の人の背中を見て育った」という感覚がなかったのですが、西田さんとご一緒している間は、背中から学ばせてもらうことが多かったような気がします。実際、西田さんは撮影中「僕だけを見て」と言うんです。言われるがまま西田さんを見続けていたら、いつの間にか、目の動きひとつで今何を求めているかが分かるようになりましたし、言葉では言い表せない、感覚的な部分での学びもたくさんありました。時にぶつかることもありましたが、西田組といわれているスタイリストの菅原(恵)さん、ヘアメイクの佐藤(淳)さんがフォローして下さって、すごく助けて頂きました。

――亡くなられたお父様の存在と重なる部分があったんですね。

鈴木 西田さんのもとには5年近く付かせてもらいました。西田さんは登山が好きで、一度、ネパール地震の影響で登頂中だったエベレストを断念したことがあったんですね。映像関連の会社も、ブライダルの会社も、全部3年を区切りに働いていたので、当初は西田さんのアシスタントも3年で終えるつもりでいましたが、エベレスト登頂は最後まで見届けたいと思い、長くいさせてもらったんですよね。次のアシスタントが決まらなかった、という理由もあるのですが。それくらい西田さんのことは尊敬していますし、大好きです。

――そう思える師匠に出会えて良かったですね。独立後は?

鈴木 実は、独立した年に結婚したんです。そこで西田さんが独立&結婚祝いとして、色んな出版社の方を招いた食事会を開いてくださって。そのご縁もあり、各誌の取材案件や、事務所の方との作品撮りを積極的に行なっていました。ありがたいことに、バイトで食い繋ぐこともなかったですね。転機となったのは、独立半年後にいただいた島田晴香さんのフォトブック『そんな生き方』(竹書房/2017年)です。当時、主流だったSNSのFacebookに、仕事の写真や作品撮りを積極的に投稿していたら、それを見た担当編集の方が、フォトブックを撮影するカメラマンの候補の一人に僕の名前を挙げてくださったんです。その担当編集の方とは面識がなかったので、本当に運が良かったなと思います。

――いきなりフォトブックの撮影に抜擢されたんですね。すごいです。

鈴木 雑誌のみならず写真集を多く手がけている西田さんのもとにいたこともあって、独立後の目標は、写真集を撮ることでした。前編でもお話ししましたが、いつかは無くなってしまうものを残しておきたい、という気持ちが写真を撮る原点でもあるので、僕も自分の名前で、自分の写真で作品を残したいと、強く思っていたんです。まさかこんなにも早く叶うとは思いもしませんでした。島田さんの写真集は自腹で何冊も買って、各出版社の編集者さんに自ら配りに行きましたね。お金はなかったけど、いちばん今の自分の写真が伝わると思ったので。

――『そんな生き方』は、島田さんのエッセイと共にランジェリーをはじめセクシーなグラビアカットも掲載されている、読み応えのある一冊ですね。

鈴木 都内近郊を転々として撮影をしたのですが、最後のシャッターを切った瞬間はいまだに忘れられないです。達成感で、感極まって涙が出そうになったんですよ(笑)。僕が泣くのは意味が分からないから、グッと堪えましたけど......。写真を始めてから、写真で生きると決めてから、紆余曲折を経て、こうして仕事で写真を撮れていると思うと、どうしても込み上げるものがあったんですよね。その名残もあって、いまだに最後にシャッターを切る瞬間は特別な意識が働きますね。

――というと?

鈴木 ほぼ毎回、「最後の一枚撮るよ」と宣言してから撮ります。昔は「最後に最高の1枚を」という気持ちで宣言していたのですが、最近は「最後だからオフショットっぽいのもいいんじゃない?」という周りの雰囲気もあって、若干意味合いは変わってきているのですが(笑)。

――週プレで鈴木さんのお名前を見るようになったのは、ここ2~3年のイメージです。

鈴木 独立当初に取材で何度かお世話になった気もしますが、本格的に撮らせていただくようになったのは2023年、池田メルダさんのグラビア(デジタル写真集『もう隠せない』)辺りからだったと思います。週プレさんは、ずっとお仕事したいと思っていたのですが、なかなかご縁がなく。あるとき、事務所の方の紹介で編集の方にご挨拶しに行ったのを機に、お仕事をいただく機会が増えました。のちにその編集さんからは、天羽希純さんの写真集『きすみすき』もご依頼いただいて。他社では、いきなり写真集ということも珍しくないですが、週プレさんは、まず誌面で撮影してから写真集を撮らせてもらえるのがありがたいなぁと思った記憶があります。

(左)池田メルダ『もう隠せない』/(右)天羽希純『きすみすき』より(左)池田メルダ『もう隠せない』/(右)天羽希純『きすみすき』より
――ちなみに、高校時代に見た映画に影響を受け、映像化系のお仕事を目指された時期もあったかと思いますが、その感性が写真に影響することはあるのでしょうか?

鈴木 ありますね。技術的な話をすると、動画用のシネマレンズをあえてスチールで使うとか。細かい違いなのですが、ズームの滑らかさ、感覚が、スチール用のカメラとは若干違うんですよね。「写真集を撮ることが目標だった」というお話もしましたが、僕は、どんな数ページのグラビアでも"写真集を撮るつもり"で現場に臨むようにしているんです。分かりやすく言うと、ストーリー性を感じてもらえる写真を撮りたいんです。だから他のカメラマンさんに比べると、1枚の写真の強さは少し弱いかもしれないけど、流れで見たときに、何回も見たくなるような写真を撮っている自負はありますね。週プレさんのグラビアで言うと、風愛ことりさんのデジタル写真集『ことりにとりこ』は、担当編集さん発案の「秋葉原でボロボロのウエディングドレスを着たワケあり花嫁とのラブストーリー」というテーマも相まって、映画的な楽しみ方が出来る作品になっていると思います。

風愛ことり『ことりにとりこ』より風愛ことり『ことりにとりこ』より
――秋葉原でボロボロのウエディングドレス......!? B級映画にありそうなシチュエーションですね。面白いです(笑)。

鈴木 映画だけじゃなく、これまでの撮影経験や反省から影響を受けている部分も当然あります。もっとこう撮れたら......と思えば思うほど、お金もないのに、どんどん新しいカメラを買ってしまったりして。一回の撮影で5台を使い回すこともあります(笑)。あと、僕は西田さんから"光の引き算"を受け継いだと思っていて。撮影では、足りない光を足すことが一般的ですが、西田さんは、余分な光を遮断して被写体の魅力を引き立たせるんです。その考えをベースに、僕は、弱い光を足すことで瞳に生命感を足すことにこだわっています。

佐山すずか『RE:LIBERATION』より。瞳に宿る光から伝わる生命感佐山すずか『RE:LIBERATION』より。瞳に宿る光から伝わる生命感
――生命感ですか。

鈴木 はい。背景よりも、光を大事にしたいというか。そうすることで、写真の中の人が"写っている"ではなく"そこにいる"ように見えると思うんです。顔のアップを撮ることが多いのも、その瞬間の感情や存在感を残したいからです。読者の皆さまにどこまで伝わっているか分かりませんが、これからも、僕らしく表現を極めていけたらなと思っています。

――目標だった写真集も今では数多く手がけられていると思います。今後やってみたい撮影はありますか?

鈴木 グラビアの他に、広告のお仕事をいただくこともあるのですが、いずれにせよ、自分にしか残せない写真を撮り続けていきたいですね。今は境目な気がするんです。SNSの流行から世の中の写真のあり方も変わってきましたし。自分ももうすぐで独立して10年になり、年齢的にも今後の生き方を考える歳になりました。今回の取材は自分と向き合うのに本当に良い機会を頂きました。これまでの自分、これからの自分。カメラを通して新時代に向けて新しい写真を模索します。いつか無くなってしまうものを残したい。その原点を忘れずに。ありがとうございました。


●鈴木ゴータ(すずき・ごーた) 
1985年生まれ、愛知県名古屋市出身。 
趣味=ギター、サイクリング 
家族の死をきっかけに写真を始める。ブライダルカメラマンを経て、2012年11月に西田幸樹のアシスタントになり、2017年3月にフリーカメラマンとして独立。『鈴木ゴータ写真事務所』を立ち上げる。同年に島田晴香PHOTOBOOK『そんな生き方』(竹書房)の撮影を手がけたのを機に、グラビア誌やアイドル写真集を多く手がけるようになる。他、広告やファッション、映像の分野でも活動している。

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